隠れ糖尿病

糖尿病

隠れ糖尿病とは

本当は糖尿病なのに、健康診断などの血液検査で糖尿病と診断されずに見逃されている場合を隠れ糖尿病と呼ぶことがあります(隠れ糖尿病は正式な医学用語ではありません)。

健康診断では、空腹時に血糖値を調べることが多いです。空腹時の血糖値は正常でも食後の血糖値が高くなることがあります。健康な方が糖尿病になるときには、空腹時血糖値よりも、食後血糖値が先に上がることが多いです。食後血糖値が糖尿病領域になっても、空腹時血糖値が正常のことはよくあります。空腹時の血糖値が正常域より高くなったときは、すでに糖尿病になってから年数が経っていることもあるのです。

空腹時血糖値だけでは、糖尿病を見逃してしまうのです。それではどうすればよいのでしょうか。

まず、糖尿病の診断基準を確認しましょう。

  • 空腹時血糖値が126 mg/dl以上
  • 随時血糖値が200 mg/dl以上(食後の血糖値が200mg/dl以上)
  • ブドウ糖負荷試験2時間後(75gの糖を摂取したあと2時間後)の血糖値が200 mg/dl以上

上記の基準を満たすと「糖尿病型」となります。「糖尿病型」が1回だけでなく、2回確認されると糖尿病と診断されます。

空腹時血糖値が126mg/dl以上になる時期よりも、随時血糖値やブドウ糖負荷試験2時間後の血糖値が200mg/dl以上になる時期のほうが早いことが多いのです。

「糖尿病型」が1回でも、次に当てはまる場合は糖尿病と診断します。

  • 糖尿病の典型的な症状がある(のどが渇く、水分をとる量が多い、おしっこの量が多い、体重が減る)
  • HbA1c(ヘモグロビンA1c)が6.5%以上(HbA1cは、最近1〜2ヶ月の血糖の平均値をあらわす検査値です)
  • 糖尿病性網膜症がある。

従って、隠れ糖尿病を見つけるには、空腹時の血糖値だけでなく、食後の血糖値、HbA1c、必要に応じてブドウ糖負荷試験が必要になります。

隠れ糖尿病が見つかる経緯

  • たまたま食後の血糖値を測定したら140mg/dlを超えていた。
  • 尿糖が出た。
  • HbA1cが5.6%以上だった(正常値は6.2%未満)。
  • 空腹時血糖値が100mg/dl以上だった(正常値は110mg/dl未満)。

上記だけでは、糖尿病とは診断されません。しかし、正常ではない可能性が高いです。

このような時に、隠れ糖尿病ではないかきちんと検査を受けることが大切です。

正常の方は食後に血糖値が上がっても、140mg/dlを超えることはありません。

正常の方は食後でも尿糖が出ることはありません。尿糖が出たときは、血糖値が160-180mg/dl以上になっています(測定したときの血糖値は低くても、尿が溜まっている時間内に血糖値が高くなると尿糖が出ます)。

隠れ糖尿病が疑われたときは、ブドウ糖負荷試験が良い検査です。

75gのブドウ糖を飲む前と飲んだ後の血糖値を調べることにより、正常なのか、糖尿病なのか、正常と糖尿病の境界域(境界型)なのかを調べることができます。

下記のブドウ糖負荷試験が「強く推奨される場合」に当てはまる場合は、糖尿病の可能性があり、是非検査を受けましょう。

下記のブドウ糖負荷試験を「行うことが望ましい場合」に当てはまる場合は、現在は糖尿病でないかもしれませんが、境界型であったり、将来糖尿病を発症する可能性があるため検査を受けることをおすすめします。

検査を受けるときに血糖値だけでなく、インスリン(すい臓から出ている血糖値を下げる働きがあるホルモン)を一緒に測定すると、将来糖尿病が発症しやすいかどうかある程度予測することもできます。

ブドウ糖負荷試験が推奨される方

1.強く推奨される場合(現在糖尿病の疑いあり)

  • 空腹時血糖値が100-125mg/dl
  • 随時血糖値が140-199mg/dl
  • HbA1cが6.0-6.4%

2.行うことが望ましい場合(将来糖尿病を発症するリスクが高い)

  • 空腹時血糖値が100-109mg/dl
  • HbA1cが5.6-5.9%
  • 上記の基準を満たさなくても、濃厚な糖尿病の家族歴、肥満がある方

高血圧高脂血症、脂質異常症、肥満などがある方は特に検査を受けることが望ましい。

糖尿病と診断された場合は、症状がなくても治療を受けましょう(症状がなくても、糖尿病治療はなぜ必要?)。

正常と糖尿病の境界域の「境界型」と診断された場合も放っておいてはいけません。

境界型は糖尿病予備群といわれることもあり、まだ大丈夫というイメージがあるかもしれません。

しかし境界型は糖尿病になりやすいだけでなく、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの動脈硬化性疾患になりやすくなります。

境界型の問題点

糖尿病になりやすい(1年間で100人中4-6人)

狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの動脈硬化性疾患になりやすい

境界型の場合は、適度に運動をするようにし、太っている方は減量します。高血圧、高脂血症(脂質異常症)があると動脈硬化はさらに起こりやすくなるので、しっかりと治療することが大切です。