血糖値とHbA1cの関係

血糖値とHbA1c

糖尿病の治療では、血糖値、HbA1cはよく調べる検査です。

血糖値は採血をしたその瞬間の値ですが、HbA1cは1~2ヶ月前から現在までの血糖の良し悪しがわかる検査です。血糖値は1日の中でも上下を繰り返しており、食後は血糖値が上がり、しばらくすると下がってきます。HbA1cは1~2ヶ月の血糖の平均値を示す数字なので、ゆっくりと変化しており、食後で採血しても上がりません。

血糖値の変化とHbA1cの変化には時間差があります。また、HbA1cは血糖値以外の影響も受けるため、HbA1cが血糖値の良し悪しを反映していない状況が起こりえます。

血糖値は良いのにHbA1cが高くなったり、血糖値が悪い(高い)のにHbA1cが低い値になったりします。

血糖値は良いのにHbA1cが高い場合

1,食後血糖値が高いケース

食後数時間だけ血糖値が高い人がいらっしゃいます。空腹時や食事を摂取してから時間が経つと血糖値が下がり、食後数時間だけ血糖値が高いケースです。

血糖値が高い時間帯があるので、HbA1cはなかなか下がりません。

このような人が、空腹時や食後ある程度時間が経った時間帯だけに採血をしていると、食後血糖値が高いことに気が付かないことがあります。血糖値は良い結果で、HbA1cは高い結果になります。

血糖値が良いのにHbA1cが下がらない場合は、食後1~2時間の血糖値を測ってみると良いでしょう。

食後の尿検査で尿糖が出ていると食後血糖値が高くなっていることが疑われます。

1,5-AGを調べると食後血糖値の良し悪しが推定できます。

食後血糖値が高いことがわかれば、炭水化物を食べている量が多ければ減らしたり、炭水化物を食事の後半に食べるようにしたり、主に食後血糖値を下げるお薬を使ったりすると、食後血糖値が改善し、HbA1cも改善します。

2,検査前だけ食事や運動を気をつけたケース

検査の日が近づいて、食事や運動を気をつけると、血糖値は下がりますが、HbA1cは急には下がりません。HbA1cは1~2ヶ月前から現在までの血糖の良し悪しを反映する検査だからです。数日血糖値が下がってもHbA1cは下がりません。検査の前だけ食事や運動を気をつけると、血糖値は良くなっても、HbA1cが良くならないという検査結果になります。

糖尿病の治療では、HbA1cを良くするだけでなく、1日の血糖値の変動を少なくすることも大切です。そのためには、空腹時血糖値や食後血糖値を調べる必要があります。検査の前だけ食事や運動を気をつけるようなことはしないで、そのままの状態で受診し、どこの時間帯の血糖値が高いのかそれとも低いのかを調べることをおすすめします。

3,急速に血糖値が良くなった場合

糖尿病の治療を始めて、急に血糖値が良くなっても、HbA1cが下がってくるのは時間がかかります。血糖値は良い値でも、HbA1cは高い値になります。

良い血糖値を保っていくと、徐々にHbA1cが下がっていきます。

血糖値が高いのにHbA1cが良い場合

1,貧血の治療中、貧血からの回復時期

HbA1cは、Hb(ヘモグロビン)に糖がくっついたものを調べる検査です。

血糖値が高いとHbに糖がくっつくようになります。HbA1cとは、全部のHbのうち、糖がくっついているHbの割合を調べる検査です。

HbA1c = 糖がついたHb ÷ すべてのHb

血糖値が高いほど、Hbに糖がくっつくので、HbA1cが高くなります。

貧血では、Hbが低下しています(貧血とはHbが低いことです)。貧血を治療するとHbが新たに作られます。新たに作られたHbにはまだ糖がついていません。糖がついていないHbが増えるので、血糖値が良くならなくても、HbA1cは低くなります。

Hbに糖がつくのには時間がかかります。従って、貧血治療中は血糖値が良くならなくても、HbA1cが低くなります。貧血を治療しなくても、出血後、自然に貧血から回復しているときにも、血糖値が良くならなくても、HbA1cは低めになります。

2,急速に血糖値が悪くなった場合

糖尿病が急激に発症したり、急速に血糖コントロールが悪化したときは、血糖値が高くなっても、HbA1cが上がってくるのは時間がかかるため、HbA1cは血糖値に比べて低めになります。血糖値が非常に高いのに、HbA1cがあまり高くないということが起こります。